偶然の出会いや不思議な『縁』の繋がりを経験することってありますよね。
僕はかなりそういうことが多いんです。
さっき、ある友人へのメールを書きながら、彼女との出会いにまつわる不思議な
出来事を思い出していました。
なんでこんなことが起こるのか、まるで誰かにシナリオを書かれているみたいです。
彼女(その友人)は大のブラジル音楽好きで、しばしば僕に良質なブラジル音楽の
ライブスケジュールを教えてくれ、たまに『音源交換』と称して、MDで録音したお薦め
音楽の交換などもしています。
不思議な出会いは、去年の9月に「ブラジルの声」とも呼ばれている、MiltonNascimento(ミルトン・ナシメント)の久々の来日で、ブルーノート公演の
日でした。
その日は一人だったので、切符を握り締め、MTB(自転車)でブルーノートへ
向いました。
開演までにはまだ1時間近くあります。薄暗いフロア-の、一番後ろのカウンター
チェアに腰掛け、ギネスの1パイントを1杯、渇ききった喉に流し込むと、仕事疲れが
残っていたのか、突如、眠気が襲ってきました。
幸い、1人で端っこに座っていて、となりは空席だったし、気兼ねもする必要が
無かったので、いつのまにかウトウトと居眠りを始めてしまいました・・・。
(・・・・・あ~。寝ちゃったのか。どの位たったのかな。アレッ!?)
目が覚めて、腕時計を見ようとして驚きました。
なんと、となりには何時の間にか、女性が1人座っていて、しかも居眠りをよいことに
僕は、もう少しで彼女に寄りかかる1歩手前まで大接近していました。
「あっ、すみません!」
思わず飛びのいて謝ったのですが、気まずい雰囲気が漂っていました。
いたたまれずに、そそくさと腕時計を見ようとしたら、今度は腕時計がありません。
居眠りをしている間なのか、自転車で走っているときなのか、とにかくどこかに
落としてしまったようです。
このときは、腕時計をなくしたことより、開演時間まで後どの位あるのかが気になり、
あたりを見回しましたが、やっぱり時計はありません。
ふと、となりを見ると、先ほどの女性は腕にスウォッチをしています。
小冊子を読みながら静かに開演を待っているのでした。
先ほどの気まずさを掻き消すためにも、イチかバチか、その女性に時刻を聞くことに
しました。
「あの、今何時ですか?」
ちょっと気兼ね気味に聞いてみます。すると、にっこり笑顔で
「まだ、開演までは15分くらいありますよ。」
と、答えてくれたのです。これで気まずい雰囲気はどこかへ飛んで行ってしまい、
彼女の手にしていた小冊子がブラジル音楽ファンの専門誌だったことから一気に
話が弾みだしました。
なんでも、彼女はミルトンを今まで聴いた事がなかったものの、いつも見に行っている
バンドがミルトンの曲をカバーしているとのこと。
そのバンドはブラジル人と日本人の混成で、ドラムの人は、某大物女性アーティスト
の旦那様でもあるということ!
「えっ!そのドラマーって、もしかして××っていう名前じゃない?」
僕は思わず問い返しました。
実は、その話をつい最近、別の場所で聞いたことがあったのです。
――数週間前、大学時代の音楽仲間の▼▼が勤めるフレンチレストランへ数人で
行った時のことです。
「××って覚えてるだろ、ドラムやってたやつ。あいつ、あの有名な●●と結婚
したんだよ。」
「へーッ、凄いねえ。最近連絡取ってないなあ、久しぶりに会いたいけど、連絡先も
知らないしね。」
こんな話でした。――
「えーっ!××さんをご存知なんですかあ?」
僕の話があまりにも意外なのでしょう、彼女は目をまるくしていました。
当たり前だよね、たまたま隣に座った人が、お気に入りバンドのメンバーと友人
だったって事だもん。
「うん、大学時代は一緒にライブをやったこともあるよ。向こうも僕を覚えてると思う。
僕も、レストランに居合わせた友人も、××に会いたいねって言う話をしたばっかり
なんですよ。」
「じゃあ、今度、ライブがあるときに会いに来られたらどうですか?ご連絡しますよ。」
と言うわけで、話はとんとん拍子に進み、後日、その××君に会いに、大久保の
ライブハウスへ行くことができました。
本当に、こんな偶然に感謝です。
と、ここで話は終わりそうですが、さらに続きます。
大久保の小さなライブハウスでの演奏は予想よりもはるかに素晴らしいもので、
××君の演奏力も、大学時代とは比較にならないほど繊細かつパワフル。
(上手くて当たり前か。10年以上プロやってんだもんね。)
すっかり満足して、演奏が終わった後にステージヘ向うと、ひとこと声をかけました。
「演奏、素晴らしかった!俺のこと、覚えてるかな?大学時代にドラムやってた・・・」
「え・・・。あー思い出した!なんだ、久しぶりじゃない。 あ、そういえば、▼▼って
覚えてる?あいつ、フレンチラストランに勤めてるって噂なんだけど、行ってみたい
のに連絡先がわからないんだ。」
「ホント!! ▼▼なら、ついこの前にヤツのレストランへ行ったよ。向こうも××に
会いたがってたよ。じゃあ、今ここでケイタイに電話かけるから、連絡先を交換しなよ。」
というわけで、何と、一人の女性とたまたま隣り合わせになったことがきっかけで、
15年来の旧友が3人、お互いに再開したり、連絡しあうことになりました。
これって、偶然だと思いますか?