こどもたちと、近所の公園に遊びに行くときのこと。
サエは「じてんしゃのる~。」と三輪車の練習にやる気マンマンで、
いそいそと靴を履いています。
ハナは浮かない顔をしています。
「せっかく買ったヒーリーズを練習すればいいんじゃない?」
とボクが言ったからです。
(ヒーリーズはスニーカーにローラースケートのタイヤが付いてるヤツね)
「別に無理にならなくてもいいけど、スキーだってスケートだってできるじゃない。」
「・・そうなんだけど、だってこわいんだよお。先に行ってて、トイレ行ってから行くから」
「わかった。じゃあ、カギかけて来てね。」
そんなわけで、サエとボクとで公園に着くと、まもなくハナがやってきました。
手にはヘルメットと膝当てを持って。
「あれ、ヒーリーズやらないんじゃなかったの?」
「・・・そう思ったんだけど・・・。」
「あたし、自分に負けちゃったの・・・。」
うつむいて肩を落としています。
「え?それどういうこと。」
「だって、ヒーリーズはやりたくない気持ちなんだけど、ずっとできないのもやだし。」
「やらなきゃっていう気持ちに負けちゃった・・・。(泣) 」
両目から大粒の涙がこぼれています。
「ハナ、それって逆だよ。負けちゃったんじゃなくて、勝ったんだよ。」
「だって練習しない方がラクなのに、辛い練習を選んだんでしょ?」
「だから、ラクをしたいっていう気持ちに、がんばらなきゃっていう気持ちが勝ったんだよ。」
ハナは一瞬、驚いたようにこちらを見たあと、すぐに納得したようにヘルメットを
手にとって頭にかぶせました。
「はやくーサエちゃんのじてんしゃおしてよーーー!」
やり取りを見守っていたサエが催促します。
「はいはい、じゃあ、ふたりともいくよ~!」
こうして、右手は三輪車のもち手を握り、左腕にはハナがつかまったまま、ゆっくり
公園を行ったりきたりしました。
まだまだ手がかかります。(苦笑)