僕はねえ、今日のお昼にヘッドホンをして、ひとりフレッシュネスバーガーを
ほおばりながら、口についたケチャップを拭くふりして、実は涙を拭いてました。(笑)
聴いていたのは、ダニー・ハサウェイの1971年のセカンドアルバムです。
「DONNY HATHAWAY」
若くして自らの命を絶った彼の、26歳のときの作品です。
これは、あまりに素晴らしいから、「ほとんど聴かないアルバム」なんです。
言ってることが意味不明かもしれないけど、だって、
聴くのがもったいないんですよ。
どうしても聴きたいとき以外は聴かないようにしてるってこと。
このアルバムはね、落ち込んでいるときや、心や身体のどこかに澱(おり)
のようになって沈殿した、不浄なものを浄化したいときに聴くことにしてるの。
深くて、繊細な感情に満ちた絹のような歌声。
アルバム全体に流れる希望と、その裏に見え隠れする絶望感。
まるで、抗えないものと知りながら、それでもただひたすらに
それと闘っているような、ひたむきさと哀しさと勇気が僕の胸を
打つのかもしれないなあ。
聴いていると、涙があふれてくるんです。
このアルバム、ぜひ聴いてください。
特にA面最後の曲、「He ain't heavey,He's my brother」。
この曲のイントロをはじめて聴いたのは、大学2年の時にちょっとした病気で
入院している、ベッドの上でした。
澄み切ったハンドベルの音とピアノで静かにはじまり、深く静かに歌いだした
ダニーの声が徐々に熱を帯びてくるころには、もう涙が止まらなかった。
もうずいぶん前のことですけど、昨日のようにおぼえています。
彼は、黒人シンガーとしては例のないほど高学歴で、当時としては珍しいほど
白人の作品を独自の切り口で取り上げていたし、メッセージ性の高い歌詞は
他のソウルシンガーとはまったく違っていたと思う。
当時は公民権運動が巻き起こっていたんだけど、彼は黒人に対しては
自分たちの素晴らしさをもっと知って欲しいと歌いながら、他の黒人の
ように白人批判をすることをしなかった。
きっとどちらのよさも認め合って、仲良く生きていきたかったんだと思う。
だから、あの時代に白人の曲をどんどん取り上げたんじゃないかな。
でも70年代後半は、彼の願いとは違った方向に動いていっちゃうんだよね。
そして彼は1979年にホテルから身を投げてしまった。。。
当時、黒人と白人の対立はもっと複雑化して残っていたし、
音楽も黒人向けと白人向けがマーケットとして分けられちゃった。
彼の音楽は、ディスコでも、ファンクでも、もちろん白人音楽でもなかったし、
希望を失った人たちにはメッセージ性よりも、甘いラブソングが受けた
のかもしれない。
当時は僕も知らなかったことだけど。
いままでも、これからも、このアルバムはめったに聴かないと思います。
あなたが聴いていて涙が出てきた音楽を、教えてくださいな。
追伸:
涙が出た理由は言及しなくてもいいです。僕もはっきりとはわかりませんから。(苦笑)